米国では、重要な分野での人材不足が深刻化しており、サイバーセキュリティとヘルスケアはその中でも特に緊急の対応が求められている2つの領域となっている。
拡大する〝サイバーセキュリティ〟人材不足
サイバーセキュリティ分野の労働力は2013年以来着実に増加してきたが、それでもなお重大な不足が続いている。2024年10月時点で、業界では現在の需要を満たすためにさらに26万5,000人の人材が必要とされており、必要な仕事をカバーできるのは83%にとどまっている。現在サイバーセキュリティ関連職に従事している125万人では、増大する脅威や技術の進歩に対応するには十分ではない。
需要はすべてのキャリアレベルで広がっており、初級のサイバー犯罪アナリスト(第2四半期から第3四半期にかけて求人が23%増加)から、上級のサイバーセキュリティエンジニア(10%増加)までが含まれる。また、人工知能(AI)の技術的進展が仕事の要件にも変化をもたらしており、AIスキルを求める求人は過去1年間で6.3%から7.3%に増加した。一方でホワイトハウスは、従来の資格を持たない候補者を重視したインターンシップや採用プログラムを通じて、サイバーセキュリティやテクノロジー分野で50万の求人を埋めるための新たなプログラムを開始した。
多様性に関しても課題が残っており、サイバーセキュリティ分野における女性の割合はわずか25%にとどまっている。これには、所属感の欠如やスキルに対する不安といった障壁が影響しているとされ、さまざまな背景や経験を持つ人々がキャリアに参加しやすくするための包括的なリクルート戦略が必要となる。
拡大するヘルスケアの危機
ヘルスケア業界も同様に苦境に立たされており、2028年までに10万人の重要な医療従事者が不足すると予測されている。これは、COVID-19パンデミックによる離職加速、広範な燃え尽き症候群、低賃金が一因となっている。米国の高齢化も需要の増加を促しているものの、新たな雇用創出ではこの需要を満たすのは難しいと見られている。
Mercerの予測によると、医師不足はテキサス州、カリフォルニア州、ニューヨーク州で深刻化し、一部の州では逆に過剰となる見込み。看護師や医療助手も多くの州で不足が予測されており、特に需要が高いカリフォルニア州とニューヨーク州では深刻な不足が見込まれている。看護助手は7万3,000人を超える不足が予想されており、看護師や医師に追加の負担が生じる可能性が高くなる。これにより、予防医療や初期医療の提供に大きな影響が出る可能性があると予測される。
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