国際港湾労働組合(ILA)では、今夏より調整が行われてきた米海事同盟(USMX)との賃金や自動化技術を巡る交渉契約が締結に至らず、米東部時間10月1日午前0時1分をもってストライキに突入することを発表した。ILAによる沿岸部全域でのスト実施は、1977年以来、約50年ぶりとなる。
米国東海岸およびメキシコ湾岸沿岸の主要港を含む湾従事者は約4万5000人、米国海運の約43%にあたる輸入貨物輸送び取り扱いが停止することになる。今回のストライキの実施により米全土の物流が影響を受け、一日あたり数十億ドルの損失が生まれるなど、経済への深刻な打撃が懸念されている。
6月の時点でILAが交渉を中断し、ストライキのリスクが伝えられてきた。これにより、各企業はリスク管理の一環として貨物の一部を西海岸の港に迂回させるなどの対策を講じてきたが、これらの対策が不十分との声も上がっていた。ストライキによる影響は広範囲におよび、輸送コストや供給安定に不確実性が生じることが考えられる。
バイデン政権は、労働組合の活動と勢力を監視する米国連邦法「タフト・ハートリー法(Taft-Hartley Act)」の発動により、労働者の職場復帰を命じる可能性もあるが、大統領選も控えたこの時期での決定には複雑な政治的判断が伴うと見られる。今後も交渉の進展を注視しながら、状況に備えたリスク管理の検討が必要となってくる。
《追記》10月1日に始まったストライキは、2日後の10月3日、労使は賃金に関する暫定的な合意に達したと発表した。これによりストライキの長期化による混乱は回避できたが、正常化には時間を要する見通しとなる。