成AIが原因で求人数が減少?成AIが原因で求人数が減少?

DataGOL
Senior Vice President / Business Development
吉平 健治(Kenji Yoshihira
 Email: kenji@datagol.ai

前回の記事では、生成AIが労働市場に与える影響について未来的な視点で述べましたが、すでに現実に労働市場へ影響を及ぼし始めています。

生成AIが労働市場に与える影響についての議論は以前から続いていましたが、つい先日(2024年11月11日)、HBRが実際のデータを基にした定量的評価の記事(Research: How Gen AI Is Already Impacting the Labor Market by Ozge Demirci, Jonas Hannane and Xinrong Zhu)を公開しましたので、今回はその内容をご紹介します。

記事の概要によると、ChatGPTや画像生成ツールといった生成AI技術に基づくサービスが、ギグワーク系オンラインの仕事に与える影響が調査されています。2021年から2023年にかけ、フリーランスの求人情報を100万件以上分析した結果、特にライティングやソフトウェア開発、グラフィックデザインといった職種の需要が減少していることが分かりました。主なポイントは以下の通りです。

  • 求人数の減少:生成AIツールの導入後、AIで置き換えやすい仕事の求人が大幅に減少しました。ライティングは約30%、ソフトウェア開発は約20%、グラフィックデザインは約17%減少しています。
  • 競争の激化:求人が減少したため、限られた仕事を巡る競争が激しくなり、応募数は約8%増加しています。これにより、仕事を得る難易度が上がっています。
  • スキル要求の増加と賃金の上昇:AIで置き換えやすいポジションでは、必要なスキルの多様化・高度化が進み、賃金も約6%上昇しています。
  • 生成AIスキルの需要増:同時に、ChatGPTなどの生成AI技術を活用できるスキルを求める求人が増加しており、特にソフトウェア開発やウェブ開発の分野で顕著です。

興味深いのは、昔の自動化(主にロボットによる)と現在の自動化(生成AIによる)との違いを示している点です。以前の自動化は主に製造業などの物理的な労働に影響を与えていましたが、生成AIは知的労働やクリエイティブな分野に直接影響を及ぼしています。これは自動化の新たなフェーズであり、その様相が変わってきていることを定量的に示したのは画期的です。

また、今回の調査はオンラインギグワーク系プラットフォームを対象にしていますが、この傾向は近いうちに一般的なフルタイムの職種にも現れてくるでしょう。新技術が新たな職種やスキルセットを生み出している事実が、データとして明確になった点も興味深い点です。

前回の記事で触れた「スキルセットの多様化」は、すでに現実となっています。皮肉なことに、生成AIの普及によって特定の仕事の求人は減少する一方で、生成AI自体を使いこなすスキルが求められるようになっています。これは職務要件の複雑化を示しており、採用側・求職者双方にとって、こうした複雑化に対応することが求められています。

企業の管理者としては、今後、採用するチーム構成のスキルが変わっていくことを見越し、現従業員に対してもAIの影響を分かりやすく説明し、スキル向上の機会を提供し、AIを活用した仕事の管理に取り組むことが重要になるでしょう。

記事でも述べられているように、AI技術を既存の仕事と融合させていくことが鍵となりそうです。

《前回の記事》
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