アマゾン(Amazon)は、2024年10月、小型モジュール原子炉(SMR)の開発支援に向けた3つの新契約を発表した。これは、カーボンフリーエネルギーへの移行を目指す同社の大きな一歩であり、2023年の目標をすでに7年前倒しで、世界の全事業を100%再生可能エネルギーで運営するという目標を達成している。
事業拡大と顧客ニーズの増加に伴い、アマゾンのエネルギー需要も増加しており、同社は再生可能エネルギーへの投資を続ける。また、それと同時に運営に必要な電力を供給し、電力網に新しいエネルギー源をもたらすことができるカーボンフリーエネルギー源を模索している。信頼性が高く、規模の拡大が可能な原子力エネルギーは、その一環として重要な役割を果たす。小型モジュール原子炉(SMR)は、従来の原子炉に比べて物理的な設置面積が小さく、グリッドに近い場所に建設でき、建設時間も短縮できるため、迅速に稼働できるという利点がある。
アマゾンが複数の地域で締結した「SMR技術の開発サポート契約」は次の通り
ワシントン州:州の公共事業連合であるEnergy Northwestと提携し、4基の先進的なSMRを開発。プロジェクトの第1段階では320メガワット(MW)の電力を発電し、最大960 MWまで拡大する可能性がある。これは77万世帯以上に電力を供給するのに十分な容量で、2030年代初頭には太平洋岸北西部のエネルギー需要を満たすことが期待されている。また、アマゾンは次世代SMR技術を提供するX-energyにも投資し、X-energyの技術を利用して5ギガワット以上の新しい原子力プロジェクトを開発する予定。
バージニア州:Dominion Energyと提携し、同社のNorth Anna原子力発電所近くでSMRプロジェクトを検討している。このプロジェクトにより、バージニア地域の電力網に少なくとも300 MWの電力を供給し、今後15年間で85%の電力需要増加が見込まれる地域に対応。
ペンシルベニア州:Talen Energyと協力し、同社の原子力施設に隣接するデータセンターを共同設置する契約を結んでいる。この施設は、アマゾンのデータセンターに直接カーボンフリーのエネルギーを供給し、既存の原子炉の維持を支援する。
アマゾンの原子力エネルギー投資は、カーボンフリーエネルギーの供給を促進するだけでなく、地元経済にも貢献する。ワシントン州でのEnergy Northwestとの提携は、SMRプロジェクトが稼働することで、最大1,000人の一時的な建設作業員と100人以上の常勤雇用を創出すると見込まれる。また、ペンシルベニア州では、Talen Energyとのデータセンターキャンパスの建設により雇用が生まれ、既存の施設で働く900人の雇用を守ることに繋がる。
これらの原子力エネルギーの取り組みは、アマゾンが2040年までに全事業においてカーボンニュートラルを達成するという「Climate Pledge(気候変動誓約)」を実現するための一環。再生可能エネルギーと原子力エネルギーを組み合わせることで、アマゾンは成長するエネルギー需要に対応しつつ、持続可能な未来に向けて前進していく。
アマゾンのSMRへの投資は、事業の増大する電力需要を満たすだけでなく、長期的な持続可能性を追求し、地元コミュニティとクリーンエネルギーの未来をサポートする重要な一歩となっている。
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